労働組合

雲行きが怪しくなってきた佐野SAの問題 ―ストライキの連続は危険な兆候―

佐野SAの第二回のストライキは危険?

佐野SAでのストライキの件。労働組合員として活動する者としては重大な関心をもって見ているわけですが、なにやら良からぬ方向へと進んでしまっているようで、その行方に大変危惧するところです。

<<佐野サービスエリアのストライキ騒動>>

 事は経営側の横暴から始まったようですので、最初に行われたストライキは労働者側の当然の権利として是認されるものだったように見えるのですが、二回目として行われたストライキはSAの従業員によるものと言うよりは、労働組合活動のためのストライキになってしまっていることが懸念されます。

 というのも、二回目では、どうやらSAの従業員ではない人物が横断幕を掲げ、それに対して会社側が「営業妨害だ」と抗議しているからです。

 おそらく、一部の過激な労働組合運動家たちが外部からの支援というかたちで入り込んでいるのではないかと思います。こうなってしまうと、佐野SAの問題解決のためのストライキではなく、労働組合活動を展開するための、いわば一部の労働組合のためのストライキに利用されてしまいます。これは問題の解決ではなく、混乱を呼ぶだけです。

 こういう一部の過激な活動家による組合活動のためのストライキはこれまで賛同してくれた普通の組合員を遠ざける結果にもなります。

 実際に、佐野SAの労働組合の活動にはついていけないと疑義を呈する組合員と思しき方のアカウントが開設されて、内部でしか知り得ない情報がつぶやかれています。

ストライキは伝家の宝刀

 ストライキは労働者に認められた活動ですので、事ある際には労働組合としても繰り出したい手法ではあるのですが、これには相応の危険が伴います。ストライキを行うことで、一時的に業務が滞ることにもなるからです。

 労働者は経営のことを考える必要はないのだから、業務が滞ろうと遠慮なくストライキを行うべきだとの声も労働組合の中ではないわけではありませんが、ストライキで会社の業務を大きく滞らせ、それによって社会の信用を失わせて、会社を傾かせてしまっては、本末転倒です。

 ストライキは伝家の宝刀として、「ここぞ」の場面での行うという慎みが労働組合側にも求められるのです。

 のべつ隈無く、経営者が気にくわないのでストライキを行うというようでは、いずれ立ちゆかなくなります。

 ただ、会社がどうなろうが、自らの主義主張に基づく、ただただ労働組合活動をしたい人たちにとっては、今回のようにストライキが行われるような場所は入り込むのに打って付けのところです。

 佐野SAの従業員の皆さんは、おそらく、外部の労働組合員がやってきて、心強く思っておられるのかもしれません。そういう外部のプロの労働組合員は専門的な知識や経験を有していますので、はじめて経営者側と対峙することになった従業員の皆さんにとってみると、大変心強い存在のはずです。

 ですが、彼ら外部のプロ活動家は、あくまでも活動の持続的な展開を企図しています。もし佐野SAで経営側が解決策を提案してきたとしても、それを拒否するように煽動するはずです。組合活動の拡大が彼らの目的であり、問題が解決してしまっては困るからです。

 はっきり言ってしまえば、彼らプロの組合活動家たちが行っているのは組合活動ではなく、政治活動です。その点、大変な注意を払う必要があります。

 少し古い雑誌記事ですが、こんな話もあります。

https://diamond.jp/articles/-/8853

佐野SAの従業員の皆さんへ

 佐野SAの従業員の皆さんに、労働組合活動をしている者として、アドバイスを差しあげるのであれば、外部からやってきたプロ活動家とは早く手を切ることをお勧めします。

 彼らと結びついていては、問題の解決は遠くなります。従業員たちで結束し、真摯に経営側と交渉をすること。ストライキを行うことも、もちろん選択肢には含まれますが、それはくまでも最終手段です。ストライキをはじめ、過激な手段に何としても訴えようとする唆す外部の人物に乗せられてはいけません。

 もちろん、経営側との交渉は一筋縄ではいかないと思います。報じられるところでは、一回目のストライキに対して、会社側が損害賠償を請求しているようです。一回目のストライキは適法なものだったように外側からは見えますが、こういう状況で、ストライキという強硬な手段を連続させても、かえって労働者側の立場を悪くする可能性があることに考えを及ぼした方が良いです。

 労使の間での行き違いについては、きちんと両当事者間で話し合うべきで、そこに外部からの活動家を介在させてしまうと、事がややこしくなるだけです。それでは、解決には向かっていきません。