ストライキ実施へ
8月31日、そごう・西武労働組合は西武池袋本店でストライキを始めました。約4000人の組合員のうち、池袋本店に勤める約1000人が出社を取りやめることによるストライキで、大手百貨店でのストは1962年の阪神百貨店以来約60年ぶりとのことです。
https://www.asahi.com/articles/ASR8033H7R80DIFI005.html
先月7月の段階で、スト権が確立されたことは、こちらでも取り上げました。
https://roudou-diary.com/2023/07/31/
結局事態は進展せず、ストライキの突入と相成ったわけです。
ストライキと並行して、そごう・西武を傘下におくセブン&アイ・ホールディングスは、臨時取締役会を開き、9月1日付で米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」にそごう・西武の株式を譲渡することを最終決定しました。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230831-OYT1T50108/
そもそも、ストライキに至る原因となったのは、この株式譲渡をめぐる交渉で、労働者側がないがしろにされたことがあります。8月になって、ようやく、そごう・西武売却について経営側から情報提供されたとのこと。ここまで、もう少し丁寧に経営側が労働組合に説明を尽くしてくれていたら、状況は変わっていたでしょう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/880305d891bcd83243b934fe3a66db1940dac768
業績不振により、株式の譲渡が検討されているわけですから、経営側としたら労働者の声など聞いていられないといったところでしょうが、さすがにやり方が強引すぎたのではないでしょうか。
労働紛争は引き継がれる
ネット上などでも、今回のストライキをめぐって、「やっても無駄」といった意見もあるようです。
確かに、ここでストライキを実施したからといって、株式の譲渡を止めることが出来なかったわけですから、その点をもってしては無意味だったかもしれません。ただ、まったく無意味だったかというと、それも違います。
そもそも、これまで断続的に労働組合は経営側に協議を要請してきましたが、それがないがしろにされたからこそ、正式な段階を踏んで、今回のストライキに至っています。今日、株式譲渡がなされるから、当日になって慌ててストライキに突入したわけでもありません。
この正式な手続きというのは、まず、経営側と労働組合が交渉を行っていました。その交渉の決裂したことから、全組合員の批准投票で行われました。その結果、90%以上の賛同を得て、7月にスト権が確立したわけです。
https://mainichi.jp/articles/20230725/k00/00m/040/098000c
そして、労働関係調整法37条に基づいて、何を争っているか、東京都労働委員会へストライキ・労働争議予告通知を出しています。
これにより、今回は正式な手続きを経た労働紛争ということになります。正式な手続きを踏んでいるので、株式譲渡がなされて、事業が別の主体のものとなっても、この労働紛争は譲渡を受けた主体にも引き継がれることになります。ストライキの実施を理由に労働者を不当に扱うようなことがあれば、当然に、それは違法な行為となります。
労働組合としては雇用の維持を望んでいるはずで、それがどこまで受け入れられるかは不透明ですが、少なくとも株式譲渡先のファンドは労働組合側とも今後も交渉を続けていく必要があります。それだけでも、今回のストライキは十分な「成果」があったと言えます。