労働組合, 社会

トヨタ春闘 第1回労使交渉で満額回答の衝撃

春闘の趨勢を決める?

 その年の春闘の趨勢を決めるというのは言い過ぎとしても、労使ともに関係者はその動向を気にしているトヨタの春闘。今年は、異例と言える展開をいきなり見せています。

 第1回労使交渉の場で、トヨタの豊田章男社長は組合側要求に満額回答で応える方針を表明したのです。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220225-OYT1T50263/

 第1回労使交渉で、もう満額回答というのですから、おそらく事前に労使での調整があったのだとは思いますが、それにしても「満額」というのは驚きです。

 トヨタの労使交渉は例年3回行っていたはずですが、となると、残りの2回は賃金以外のところで話し合いをするのだと思います。と言っても、それは去年もそのような感じで、賃金のところで交渉していたことを問題視するような記事もありましたが。

https://www.asahi.com/articles/ASP3K5VSTP3KOIPE005.html

業界内の組合のない企業の労働者にまで配慮?

 第1回労使交渉の場で、豊田社長は、500万人いる自動車産業で働く労働者のうち、組合を持つ企業に所属するのは3割にとどまり、残りの7割は要求をぶつける仕組みすら無いとの問題意識を表明したとも伝えられています。

 経営者の側から、そのような問題意識が表明されたことにも驚きを禁じ得ません。組合がない企業のなかには、組合を作ろうとする動きを「潰して」きたところがありますから。基本的に、経営側は組合の存在を快く思っていないわけで、「組合なんてない方が良い」というのが本音ではないかと思います。

 第1回の労使交渉で満額回答をしてしまうくらいの労使の関係性があってこその豊田社長の発言でしょうが、それにしても、「組合のない企業で働く労働者の声も」と経営側に言われてしまうと、組合側は立つ瀬がないですね。

労使協調のなかでの労働組合の役割とは

 どこもトヨタのような「良好な」労使関係というわけではなく、最近では、労働組合の要求があろうがなかろうが、経営環境を理由に経営側が賃金や労働条件を提示してくることの方が多いような気もします。あるいは、交渉の余地がないので、はじめから労使協調路線というところも少なくないでしょう。

 いずれにしても、いたずらに労使の対立を煽る一部の偏った労働組合は別として、いかに労使で折り合いをつけてより良い労働環境を築いていくのかを考えていく必要があるでしょう。さすがに、第1回の労使交渉で満額回答を引き出すほどの労使関係を築くのは難しいと思いますが、労働組合としても最大限の回答を得られるような日々の活動と交渉をしていく必要がありますね。トヨタの労働組合くらいの組織力があればそれが出来ても、他ではなかなか難しいというのが現実でしょうけど。