労働組合, 社会

富士そばの労働紛争に注目

富士そば、労働組合幹部2人を懲戒解雇

 日頃、労働組合に関するニュースを気にして見ていますが、なかなか衝撃的なニュースが飛び込んできました。

https://www.asahi.com/articles/ASP25574WP23UUPI003.html

 富士そば労働組合の委員長と書記長が懲戒解雇されたというのです。

 富士そばでは、未払いの残業代の支払いを求めて社員が労働審判を東京地裁に申し立てたというニュースが昨年2020年末にありました。

https://www.bengo4.com/c_5/n_11999/

 この件をめぐって、労働組合への加入を妨げるような動きがあったとも報じられていました。

https://www.bengo4.com/c_5/n_12226/

 残業代の未払いという問題から、経営側と労働組合側の間に対立が生じているのかなと思っていたのですが、事態はより深刻なところにまで進んでしまっているようです。

 外から見ている以上、経営側と労働組合側のいずれの主張が正しいのか即断することは出来ません。ただ、記事を読む限り、そして私自身も全く別の事業分野とはいえ労働組合で活動している身からすると、経営側の主張に少々無理があるように見えます。

無理筋な解雇理由

 今回ニュースになった労働組合幹部二人の懲戒解雇ですが、会社側が公表している理由は何とも無理筋です。記事には、次のように書かれていました。

①未払い残業代請求の労働審判を有利にするため、業務報告書などの勤務記録を事後的に改ざん・捏造(ねつぞう)した

②労働審判で会社側の反証を困難にするため、店長らの勤怠データがある会社のシステムを改ざんした

https://www.asahi.com/articles/ASP25574WP23UUPI003.html

 会社側の主張する理由が正しいとすると、実際には残業などしていなかったのに、その記録を管理する立場にある労働組合の幹部である社員が記録の改竄や捏造を行い、残業をしていたことにして、その残業に対して未払いがあったと社員が主張しているということになります。

 確かに、労働審判では、業務報告書や勤怠データなどの記録は重要な証拠となります。

 ただ、会社に残されていた記録を改竄や捏造したところで、その記録だけで審判の結果が出されるわけではないので、労働組合の幹部が改竄や捏造をする動機が乏しいと言えます。むしろ、改竄や捏造が発覚したときのリスクの方が大きいです。

 しかも解雇された二人は係長とのことで、この二人の上司に当たる人もいるわけです。記録の改竄や捏造と言うのであれば、実際に作業した他の社員がいるかもしれません。それにもかかわらず、どうしてこの二人だけが懲戒解雇なのでしょうか。

 そもそも労働審判に社員側が打って出たということは、会社側に残されている記録に頼らずとも自らの主張を立証できるという見込みがあってのことのはずです。通常こういう時には会社側からの記録提出などは期待できませんし、それこそ会社側に都合の良いような記録のされ方がなされているので、もし記録の提出を受けても、社員側にとって審判を有利に進める材料にはなりにくいからです。

 実際に、タイムカードを押すなとの指示を役員が出していたというニュースも先日ありましたしね。

 むしろ改竄や捏造を行っているのは会社側の方のような気もします。

会社のイメージとしてはマイナスでは?

 実際のところ、会社の記録が改竄や捏造されたのか否かは今後明らかになっていくと思いますが、この段階でそれを理由に懲戒解雇というのは会社側として最善手ではないように思います。

 富士そばのような業態であれば、現場で働く人をいかに確保していくのかが重要で、あまり社員側を追い込むようなやり方は得策ではないはずです。

 残業代の未払いについて争っている状況下で、労働組合の幹部であるという理由に見えなくもない理由で社員を懲戒解雇するというのは、会社のイメージを悪くするように思います。

 労働組合としては、幹部二人を懲戒解雇にされようものなら、当然にこの後は徹底抗戦となります。労働組合の活動を行っているがゆえに懲戒解雇されたというのであれば、それは当然に不当労働行為になり、それは労働組合法で禁じられているので、不当労働行為であるという主張を労働組合側はしていくことになるはずです。